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国内の動物園で初の人工繁殖に成功し、元気に育ったキジバト
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道内外の森に広く生息している「キジバト」を卵から人手で育てる人工繁殖に、旭山動物園飼育展示係の鈴木悠太さん(23)が5年がかりで成功した。国内の動物園では初めての成果で、鈴木さんは「繁殖技術が希少種の保存にも役立てば」と笑顔を見せている。 キジバトは同園の北海道産動物舎で飼育展示している。自然界に多く生息する「普通種」で珍しい存在ではないが、「なぜか人工繁殖の成功例がなかった」(鈴木さん)と、不思議に思ったという。 2007年に道産動物担当になった鈴木さんはさっそく、飼育しているハトが生んだ卵を使い研究を始めたが、ほどなく壁にぶつかった。ヒナを育てるミルクの問題だ。 ツバメのヒナが親鳥が運んできた虫などを食べて育つように、鳥のヒナは親鳥から栄養分を与えられて成長する。ハトの場合は親鳥が分泌する「ピジョンミルク」が栄養源だ。 人間の母乳に相当する高タンパク、高カロリーのミルクを、いかに人工的に再現するか-。鈴木さんは、02年にアカガシラカラスバトの人工繁殖に初めて成功した東京の上野動物園に問い合わせ、繁殖に使用したというインコ飼育用のエサを取り寄せ実験した。 海外の文献も調べ、エサに卵黄などを加えてカロリーの値を高めるなど、ピジョンミルクの栄養素に近づけた。エサを与える回数を調節するなど、手探りの連続だった。 その結果、当初は数日で死んでしまったヒナも年々長生きするようになった。そして10年6月生まれの6羽は、ついに、日本動物園水族館協会が「繁殖成功」の基準としている6カ月を超えた。 ハトの現在の体長は約25センチ、体重は約170グラムで、自然繁殖より一回り小さい。一般公開の予定はないが、鈴木さんは「いずれは広い飼育舎で飛ばせてあげたい」と言う。 今回の繁殖成功はハトの研究の大きな一歩となりそうだ。「キジバトもいずれ生息数が減るかもしれない。動物園として技術や知識を深め、多くの飼育員や研究者と情報共有をしていきたい」と鈴木さんは熱く語った。(鈴木雄二)
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