北海道新聞旭川支社
Hokkaido shimbun press Asahikawa branch

旭山動物園だより

ホッキョクグマ*繁殖計画、正念場の季節     2011/12/02
円山動物園からレンタルされ、すっかり旭山の環境に慣れた様子の雌ピリカ

 雪の舞う動物園に、真っ白な毛皮が映えるホッキョクグマ。この冬、旭山動物園のルル(雌)とサツキ(同)は、出産準備のために産室で過ごしている。4月に雄イワンとの交尾が確認されたためだが、現段階では妊娠の有無は不明。同園はモニター映像を観察しながら、静かに見守っている。

 「ホッキョクグマの赤ちゃん誕生は、全国の飼育動物園の共通の願い」と語るのは福井大祐獣医師。現在の国内の飼育頭数は45頭で、10年前より16頭減っている。福井さんは「このままでは数十年後、日本の動物園からホッキョクグマがいなくなってしまう」と危機感を抱く。

 旭山の呼び掛けで昨年11月にスタートした「ホッキョクグマ繁殖プロジェクト」も、こうした経過から生まれたものだ。

 プロジェクトは、全国の動物園が、互いにホッキョクグマを貸し出して新たなペアをつくり、繁殖に結びつけようという試み。今春以降、10動物園の間で計6頭が貸し借りされ、旭山にも札幌円山動物園から雌ピリカがやってきた。福井さんは「多くの動物園が、同じ危機感を抱いていることが分かった」と話す。

 今年8月には札幌で全国の飼育担当者が集まった初の情報交換会が開かれた。雄雌を一緒にするタイミングや、ストレスなく出産、育児ができる産室環境の整備といった基本的な考えを共有していくことがねらいだ。ホッキョクグマの繁殖期は1~4月。「繁殖への下地は整った。あとは飼育担当者がうまく環境を作れるかどうかです」と福井さんは期待を込め、「1年後、旭山も含め、日本のあちこちで赤ちゃんの産声が上がってほしい」と願っている。(鈴木雄二)


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