北海道新聞旭川支社
Hokkaido shimbun press Asahikawa branch

旭山動物園だより

動物図録*命と向き合う飼育員の思いも    2011/09/02
動物図録を手にする福井さん

 旭山動物園を紹介する数多くの書籍のなかで唯一、同園が企画制作した「旭山動物園の動物図録」の最新版が園内売店に並んでいる。これまでの販売部数約2万部の“公式ガイドブック”には、飼育員の動物への熱い思いが込められている。

 2007年11月、開園40年を機に発刊され、現在までに数回改訂された。国内動物園の多くで図録を作成しているが、「動物の紹介にとどまらず、動物園の活動の実態を具体的に盛り込んでいるのが特色です」と編集にたずさわった飼育展示係長の福井大祐さん(38)は説明する。

 編集方針は「旭山の理念を伝えること」。命の大切さと、人と自然との関係を追求する同園の取り組みを、飼育員自身が執筆し多方面から紹介する。例えば、06年に死んだマルミゾウの話。衰弱して息を引き取るまでの状況を詳しく紹介し、命の意味を「動物の死」を通じて問いかける。「自然のなかを生きる動物に、人がどう関わっていくか、理解を深めてもらう一つの手段に図録が役立てば」と福井さんは考えている。

 初版から4年が経過し、来年にもリニューアルする計画が進む。福井さんの図録には、修正個所への書き込みや付箋がびっしり。ボルネオ島での野生生物保護活動やホッキョクグマの繁殖計画といった、同園の新たな取り組みも盛り込む予定だ。「多くの来園者に旭山の活動を知ってもらえるような図録を目指したい」という。

 最新版の動物図録は1冊千円(消費税込み)で、園内売店のほか郵送でも入手できる。問い合わせは旭川振興公社(電)0166・23・1792へ。(鈴木雄二)


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