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ヒグマのにおいをつけた麻袋のそばに置かれたプランター。写真撮影時の8月20日はバジルが残っていたが、この4日後に食べられた。 |
「エゾシカの森」の施設内で市民らが野菜を育てる「エゾシカの森農園」で、猛獣のにおいで食害を防ぐ実験が行われた。農園の参加者らにとって、エゾシカの生態や人間との関係について考える機会となったようだ。
参加者はアサガオ、ハバネロ、バジルの苗を1種類ずつ3本セットにして三つのプランターに植え、それぞれのプランターをオオカミ、ヒグマ、ライオンのにおいを尿などで付けた麻袋で囲った。
7月11日に設置したところ、飼育されている8頭のエゾシカのうち好奇心の強い何頭かは近づいてにおいをかぐなどの行動をとったが、すぐに食べたりはしなかった。
変化があったのは7月23日。「ライオン」のハバネロが食べられたのを皮切りに8月中旬までに「ライオン」「オオカミ」の苗はすべて食べられ、1本だけ残っていた「ヒグマ」のバジルも8月24日についに食べられた。
担当の飼育展示係・奥山英登さん(34)はオオカミの尿を使った害獣の忌避剤の存在を知り、この実験を思いついたという。「設置したそばから食べられると思っていたが、12日以上持つなど、意外に効果があった」と感心する。
実験後、参加者が記入する農園日誌には「アサガオが食べられちゃって残念」「エゾシカは好きなものを先に食べるのかも?」などの感想が寄せられた。
奥山さんは「食害は重要な問題。実験を含めた農園の活動を通して、参加者が人とエゾシカの距離感や共生について考えてくれれば」と話している。
(田辺恵) |