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| たにぐち・たけひろ 旭川市生まれ。旭川農業高校卒。1900年(明治33年)に富山県から東旭川に入植した開拓農家の4代目。1992年、父から農業法人(有限会社)谷口農場社長を引き継ぐ。2000年に「入植百年」を祝った。今年3月、農業者と消費者が連携する任意団体「ありがとう大雪・アグリトラスト」を結成し事務局長に。55歳。 |
――もう本年産米の収穫は終わり、新米が出始めています。台風があったとはいえ、夏の好天で作柄は冷夏だった昨年よりよほど良いでしょう?
「ところが平年作を下回りそうなんですよ。夏の好天が必ずしも豊作につながらなかった。長く米作りをしていて初めて分かりました」
――と、いいますと?
「七、八月の気温が高すぎて生育のバランスが崩れ、肝心の籾(もみ)の数も大きさも足りない。寒さに対する北海道の営農技術は進みましたが、高温には制御不能という弱点が露呈しました」
――谷口農場の特徴を挙げてください。
「産直宅配を軸にした、生産者と消費者との『産消交流』をシステマチックに進めていることと、稲作だけに頼らず、野菜、果物など多品目に分散し、加工する部門を持っていることでしょうか」
――産消交流は生産者側にどんな利点がありますか。
「消費者の求めるものがなにか、自分たちになにが不足しているかを学ぶ格好の従業員教育の場です。うちの従業員は今では『消費者』と呼ばず、自然に『お客さま』と呼ぶようになりました。また、量販店などが産直のパートナーとして生産者を探るとき、地元の消費者からの評判を大きな要素にしています」
――「ありがとう大雪・アグリトラスト」の結成も産消交流の延長線上にありますね。
「はい。新しい食と農のネットワークづくりを目指しています。法人四社、個人三人の農業者で結成し、都市の市民や子供たちに農業体験や食農教育の場を提供する代わりに年会費一万円をいただきます。会費から農産品を贈り、二千円を活動資金に充てます」
――大規模農場だと手間ひまのかかる有機農法をあえて実践していますが、苦労も多い?
「たとえば米の直販の場合、紫(無農薬)、緑(低農薬、白(減農薬米)と袋のラベルの色できちんと区別して消費者に理解して買っていただいていますが、大量流通向けの場合、虫が食っていたりすると二等米に格付けされるなど悪戦苦闘しています。
――有機農法そのものをまだ疑問視する向きもあります。
「かつて農業をしていた人ほど『できっこない』と懐疑的ですね。古い技術水準への固定観念があります。有機農法を実践してきて、土の力、作物が発散するエネルギーに気づきます。植物が出す化学物質が他の植物・昆虫・微生物に影響を与える現象『アレロパシー』もわかってきました」
――開拓農家の四代目として先人への思いは?
「子供のころ、祖父が『積善の家に余慶あり』を座右の銘にしていました。当時は善行を積めばばなにか自分が得をする、という程度にしか理解していなかったのですが、善行を積むことは子々孫々に恩恵をもたらすという戒めだったんですね。私も営農技術そのものより、開拓の志を次の世代に引き継ぐことを真剣に考えるようになりました」
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