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ななか窓 撮っておきインタビュー

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農業法人谷口農場 社長 谷口威裕さん
  *食・農連携が未来を開く*新米や採れたて秋の野菜をどうぞ 
2004/10/15
谷口威裕さん
たにぐち・たけひろ 旭川市生まれ。旭川農業高校卒。1900年(明治33年)に富山県から東旭川に入植した開拓農家の4代目。1992年、父から農業法人(有限会社)谷口農場社長を引き継ぐ。2000年に「入植百年」を祝った。今年3月、農業者と消費者が連携する任意団体「ありがとう大雪・アグリトラスト」を結成し事務局長に。55歳。

――もう本年産米の収穫は終わり、新米が出始めています。台風があったとはいえ、夏の好天で作柄は冷夏だった昨年よりよほど良いでしょう?

 「ところが平年作を下回りそうなんですよ。夏の好天が必ずしも豊作につながらなかった。長く米作りをしていて初めて分かりました」

――と、いいますと?

 「七、八月の気温が高すぎて生育のバランスが崩れ、肝心の籾(もみ)の数も大きさも足りない。寒さに対する北海道の営農技術は進みましたが、高温には制御不能という弱点が露呈しました」

――谷口農場の特徴を挙げてください。

 「産直宅配を軸にした、生産者と消費者との『産消交流』をシステマチックに進めていることと、稲作だけに頼らず、野菜、果物など多品目に分散し、加工する部門を持っていることでしょうか」

――産消交流は生産者側にどんな利点がありますか。

谷口威裕さん 「消費者の求めるものがなにか、自分たちになにが不足しているかを学ぶ格好の従業員教育の場です。うちの従業員は今では『消費者』と呼ばず、自然に『お客さま』と呼ぶようになりました。また、量販店などが産直のパートナーとして生産者を探るとき、地元の消費者からの評判を大きな要素にしています」

――「ありがとう大雪・アグリトラスト」の結成も産消交流の延長線上にありますね。

 「はい。新しい食と農のネットワークづくりを目指しています。法人四社、個人三人の農業者で結成し、都市の市民や子供たちに農業体験や食農教育の場を提供する代わりに年会費一万円をいただきます。会費から農産品を贈り、二千円を活動資金に充てます」

――大規模農場だと手間ひまのかかる有機農法をあえて実践していますが、苦労も多い?

 「たとえば米の直販の場合、紫(無農薬)、緑(低農薬、白(減農薬米)と袋のラベルの色できちんと区別して消費者に理解して買っていただいていますが、大量流通向けの場合、虫が食っていたりすると二等米に格付けされるなど悪戦苦闘しています。

――有機農法そのものをまだ疑問視する向きもあります。

田園風景 「かつて農業をしていた人ほど『できっこない』と懐疑的ですね。古い技術水準への固定観念があります。有機農法を実践してきて、土の力、作物が発散するエネルギーに気づきます。植物が出す化学物質が他の植物・昆虫・微生物に影響を与える現象『アレロパシー』もわかってきました」

――開拓農家の四代目として先人への思いは?

 「子供のころ、祖父が『積善の家に余慶あり』を座右の銘にしていました。当時は善行を積めばばなにか自分が得をする、という程度にしか理解していなかったのですが、善行を積むことは子々孫々に恩恵をもたらすという戒めだったんですね。私も営農技術そのものより、開拓の志を次の世代に引き継ぐことを真剣に考えるようになりました」


仕事場ちょっと拝見

仕事場ちょっと拝見  谷口農場は、旭川から東神楽、東川への道道294号を左に折れ、東聖橋で忠別川を渡るとすぐに入り口が見える。

  立ち並ぶビニールハウスのあちこちでは、たわわに実った赤いトマトをもぐ親子連れの客が目立つ。

  もいだトマトの精算所も兼ねる農場直売店「まっかなトマト」にはジャガイモ、カボチャ、ニンジンなどの野菜、納豆、缶入りだったんそば茶、発芽玄米など農場内プラントで生産した農産品が並ぶ。もちろん、この秋の新米も無農薬、低農薬、減農薬に分け袋入りで売られている。

  別棟の農場キッチン「赤とんぼ」の店長は谷口さんの娘紅美子(くみこ)さん。秋限定メニューは新米の発芽米を小豆と炊き込んだ「和の膳」とジャガイモのニョッキに自慢のトマトソースを添えた「洋のセット」(ともにドリンク付き税込み千円)。どの料理もできるだけ動物性食材、人工的な添加剤を避け、農場で採れた新鮮な野菜や有機農法による素材を使用している。


【データ】
■所在地/旭川市東旭川町共栄255
■入植/1900年(明治33年)
■従業員/社員12人、季節従業員10人(ピーク時)
■ 耕地面積/約35ヘクタール。うち稲田約20ヘクタール。
■営業内容/有機栽培米、各種野菜ジュースなどの系統出荷、直売、宅配、通信販売。有機資材販売、農場キッチン「赤とんぼ」
■営業時間/直売店午前9時―午後5時(11月から冬季休業)、「赤とんぼ」午前11時−午後7時
■ホームページ/ http://www.tomatofarm.co.jp/  
■電話 /0166−34−6699

あとがき・むだ書き

記念碑 農場に入ると、大きな黒御影石の「谷口家北海道入植百年記念碑」が真っ先に目に飛び込んできました。碑文にいわく「風雪百年 農に生きて心を育(はぐく)み人を慈しむ」。二〇〇〇年八月、曾祖父、祖父、父への感謝を込めて谷口さんが建立したものです。でもインタビューを終えてもう一度その碑文を読み返すと、この記念碑は単に父祖への思いを表現したのではなく、これからの百年を新たな決意で生き抜こうとする北の農民魂が込められたものだとあらためて感じ入りました。


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