北海道新聞旭川支社
Hokkaido shimbun press Asahikawa branch

支社長のぶらり旭川 あっ地こっ地 漫遊記

vol.09 『突哨山(とっしょうざん)』      2011/05/20

 旭川と比布にまたがる『突哨山(とっしょうざん)』は、標高239mのなだらかな丘陵で、国内有数のカタクリ群生地として知られています。明治末期から牛馬の放牧や農業利用、炭焼き用の伐採などによって人の手が入ったことから、道内では珍しい“里山”的な風情を持ち、市民にとって身近な存在です。カタクリの時期を過ぎてもオオバナノエンレイソウなどいろんな花が咲き、季節ごとにいろいろな顔を見せてくれるこの突哨山を歩き、その魅力に触れたいと思います。

 今回出発点に選んだのは、旭川刑務所の裏手にある「カタクリ広場」。ここには遊歩道“カタクリルート”の入口があります。
 前日の雨で道がぬかるむ中、足元に気を付けながらのスタートです。入口から登り始めてすぐのところにある「情報ボックス」の扉を開けると、入山簿とともに突哨山のガイドマップが積まれていました。このマップ、突哨山の見どころだけでなく歴史や生息する動植物、保全と活用法などがコンパクトに紹介されていて、散策のお供には最適です。

 実は、今回の散策にはマップ以外にも、頼もしいガイドがいます。旭川大学名誉教授で、『突哨山と身近な自然を考える会』会長を務める出羽寛先生です。「まぁ、会の生い立ちはおいおい話すとして、まずは歩いてみましょう!」と出羽さん。元気な足取りでグイグイと坂を登っていきます。
 「ほら、これがカタクリの1年目の葉。こっちが2、3年。これで5年くらいかな。花が咲くまでに7、8年かかるんですよ。カタクリが終わると次は、小さくかれんな白い花の咲く二輪草や、ユリ科のオオバナノエンレイソウの時期だね」。道端の植物を指差して解説したかと思えば、あっという間にどんどん先へ進むそのバイタリティーに圧倒されます。

 そんな出羽さんが突如立ち止まったのは、扇の沢分岐点を過ぎて南折り返しへ向かう道半ばのトドマツ林です。「手入れがされていなかったので木が混み合って、同じ頃に植えたのに細い木と太い木があるでしょう?こういう人工林は植えて終わりではなく、木が大きく育つように間伐などで手を入れていくことが大切なんです」。この突哨山では枝打ち体験や間伐体験などを通じ、子どもたちに林を守る活動の大切さを伝える活動も行っているそうです。

 それにしても、シラカバ林、針葉樹人工林や広葉樹林など、同じ山にこれだけ表情の違う林が混在していることに驚きます。「それはこの山の来歴に大きな関係があるんです。畑に入れる土を取ったり、炭焼き、石灰岩の採掘、牛馬の放牧、造林など、明治の時代から昭和40年代初頭まで“さまざまな目的で小規模に”利用されてきたことから、本州の里山のように多様な環境が作られたと考えられます」。その結果、カタクリやエゾエンゴサクなどの春を代表する植物の大群落、ミズバショウをはじめとする湿地植物、コウモリやキノコ類など1,700種を超える動・植物や菌類が生息するまでになったのだそう。

 さて、道を折り返し今度は「扇の沢ルート」を巡ります。しばらく道なりに林の間を歩いていくと、突然ぽっかりと開けた牛馬の放牧跡地に出ました。点々と生えるシラカバは、種がどこからか飛んできたのでしょうか。

 その後、右手に比布を垣間見ながら北分岐を折り返し、扇の沢をたどって歩きます。小さな流れのほとりにはヤチダモやカツラの大木が育ち、水たまりにはエゾサンショウウオやエゾアカガエルの卵も見られました。

 扇の沢口を出ると、出発点のカタクリ広場はすぐそこ。本日のぶらり歩きはこれにて終了です。
 皆さんは、旭川で誇れる自然というと大雪山系を思い浮かべるかもしれませんが、この突哨山の豊かな表情も私たちの大きな宝ものだと改めて感じました。四季折々に多様な顔を見せる身近な存在として、ぜひ歩きに来てはいかがでしょうか。

一期一会

 私は「オサラッペ・コウモリ研究所」の代表も務めており、植物などより、実はコウモリ研究の方が専門です(笑)。突哨山にある鍾乳洞や樹木をねぐらにするコウモリが夏の夕暮れに稜線で飛び交う姿も見られるんですよ。

取材協力 『突哨山と身近な自然を考える会』会長
オサラッペ・コウモリ研究所代表
出羽 寛(でわ ひろし)さん


市民有志が作り上げた
「カタクリ広場」とあずまや

いいもの、三塚った!

 突哨山では1990年(平成2年)にゴルフ場計画が持ち上がり、それに反対する市民が翌年、開発計画の白紙撤回を求めて「突哨山の自然を考える会」を結成。その後開発業者が撤退を表明し、突哨山は競売にかけられましたが、公有地化を求める4万人以上の署名を受けて旭川市が2/3、比布町が1/3を買い取ったのが2000年(平成12年)、という経緯があります。
  同会では2004年(平成16年)、募金を集めて刑務所裏手の遊歩道入口の土地8,600平米を購入し、カタクリ広場と名付けて駐車場とトイレを整備。その後あずまやと大きなビニールハウスを建て、イベントなどに活用しています。特にあずまやは、メンバーが自ら木を切り出して製材し、設計まで行って建てたというから驚きです。思いの込った“いいもの”ですね。


どうしん電子版
戻る