北海道新聞旭川支社
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日曜談話室

鈴木康之さん(59)*日本尊厳死協会 旭川上川地区懇話会長*自分らしい最期 在宅医療で支援*家族、医師と「思い」共有を  2019/02/10
すずき・やすゆき
札幌市生まれ。1984年旭川医大卒。国立道北病院(旭川)の呼吸器外科医長を経て、97年に弘子さんとリバータウンクリニックを開業した。院長として在宅医療に取り組む傍ら、その受け皿づくりを目指す旭川医師会地域ケアネット旭川の代表も務める。

 死期を引き延ばすためだけの延命措置を断り、最期まで自分らしく生きる「尊厳死」。その考え方の普及を目指す一般財団法人・日本尊厳死協会旭川上川地区懇話会が発足して1年がたった。医療法人社団みどりの里リバータウンクリニック院長として在宅医療に携わる鈴木康之会長(59)に、活動への思いを聞いた。(聞き手・山村晋 写真・大島拓人)

 ――懇話会発足のきっかけを教えてください。

 「旭川には2004年設立の『旭川地区懇話会』がありましたが、役員の高齢化で17年に活動を休止していました。旭川医大の元助教授で日本尊厳死協会北海道支部長の江端英隆医師から再開を託され、私自身も尊厳死や、老衰で亡くなる『平穏死』に興味があったので、介護福祉施設の施設長らを誘って昨年2月に会を発足しました」

 ――尊厳死への理解は広がりましたか。

 「マスコミ報道が増え、『終活』という言葉も生まれました。少しずつ浸透はしていますが、死を論議することへの抵抗はまだまだあります。尊厳死を、人為的に死期を早める『安楽死』と勘違いする人も少なくありません。日本尊厳死協会は、終末期の延命治療の拒否を意思表示する『リビング・ウイル(尊厳死の宣言書)』の普及を目指しています。懇話会は、その前段である自分が望む死のあり方について講演会と座談会を通じて学ぶことを目的にしています」

 ――尊厳死には準備が必要なのですか。

 「訪問診療で437人をみとりましたが、涙の中に笑いがあるような幸せな最期ばかりではありません。高齢者にとって、本人は元より家族も納得した最期を迎えるには、元気なうちに延命の有無を選択し、家族や医師に思いを伝える必要があります。いくら本人が尊厳死を希望していても、その思いが伝わらずに家族が延命治療をしないことへ罪悪感を持ってしまうと、希望はかないません」

 ――病院と自宅、最期を迎える場所の違いは。

 「在宅では家族が身近にいて、訪問の医師や看護師が福祉関係者とチームを組み、診察や介護に当たります。末期がん患者は痛みを緩和しながら見守ります。病気の治療が前提の病院と比べ、在宅は本人の希望を受け入れやすいのでみとりの際、本人や家族の納得感や満足感を得やすいようです。また訪問診療をしない病院の医師は老衰で亡くなる高齢者との関わりも少なく、宣誓書の提示だけでは難しい場合もあります」

 ――今後の課題は。

 「尊厳死に深い理解のある『リビング・ウイル受容協力医師』は、私を含め道北で5人しかいません。市民だけでなく、医師にも尊厳死への理解を広めてもらいたいと思います」

 尊厳死についての問い合わせは、日本尊厳死協会北海道支部(札幌)(電)011・736・0290へ。

*取材後記
鈴木会長が日本尊厳死協会に入会したのは、2016年暮れに、当時85歳の義母をみとったのがきっかけという。老衰で平穏に枯れるように亡くなる姿に「母らしい自然な最期だった」と納得し、クリニックの副院長で内科医の妻弘子さん(57)と入会した。誰もが迎える最期。尊厳死は身近なテーマだ。終末期医療の現場に、鈴木会長のような相談相手がいたら、家族としても心強いと思った。


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