北海道新聞旭川支社
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日曜談話室

佐竹正範さん(45)*ヤフーから出向中の美瑛町職員*観光と農業の両立に奔走*知恵出し合い新ビジネスを  2019/01/13
さたけ・まさのり
1973年、福井県あわら市生まれ。大学卒業後、PR会社を経てヤフーに入社。東日本大震災の被災地の商品を販売する「復興デパートメント」などの企画に携わった。美瑛では単身赴任生活だが、週末には妻と娘のいる東京に戻る。

 【美瑛】毎年150万人を超す観光客が訪れる美瑛町に、インターネット検索大手ヤフー(東京)から派遣された町政策調整課課長補佐の佐竹正範さん(45)が、観光と農業の両立を目指して奔走している。農業がつくる景観美をいかに地域経済に生かすかを模索する佐竹さんに、美瑛の魅力や活動の目標を聞いた。(聞き手・旭川報道部 武藤里美、写真も)

 ――美瑛町に出向した経緯を教えてください。

 「ヤフーでの仕事の中で全国を回り、ITを活用したまちづくりを進めてきましたが、定着しないことも多かった。そこで、自分で地域に住んでみて、内側から元気にする方法を学ぼうと考えました。13年にヤフーと町が相互連携協定を結んだことが縁になり、総務省の地域おこし企業人交流プログラムで2016年10月に美瑛に着任しました」

 ――着任した時の美瑛の第一印象は。

 「丘の景観の美しさ。これを守るために景観条例をつくったり、農山村の景観や文化を守る『日本で最も美しい村連合』を結成したりという先見の明に感動しました。条例ができた30年前といえばリゾート開発全盛期。その中であえて開発を選ばなかった住民の思いが、見渡す限りの畑地に建物がぽつんとある『北海道らしい景観』を生んだ。この景観を、持続可能な観光資源として生かしたいと思いました」

 ――一般財団法人「丘のまちびえい活性化協会」でも活動されています。

 「観光客の満足度とともに地域の経済発展を重視しています。これまで景観はお金にならないと考えられ、観光客を嫌う農家も多かった。そこで、トウキビもぎ体験をツアーに加えたり、スノーシューで農地を歩くツアーを企画したりして、協力した農家にお金が入る商品をつくってきました。町民は意外と美瑛の持つ魅力を知らない。拓真館や青い池など有名観光地を巡る町民向けツアーを行うことで、町民の観光への理解度を上げることにも力を入れています。昨年末、協会は観光庁から観光地域づくり推進法人(DMO)に認定されました」

 ――任期も残すところ1年3カ月。今後の取り組みを教えてください。

 「若者に美瑛に来てもらうためには、わくわくする仕事をつくれるかどうかが重要です。町内で事業を立ち上げるため、週1回、有志で集まり『未来の美瑛を妄想する会』を開催。『美瑛でこんな企画があったら面白そう』とアイデアを出しては実行に移しています。農地をスノーシューで歩く企画はこの会で生まれました。こうして生み出した企画を、新しいビジネスにして美瑛に定着させたいと思います」


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