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日曜談話室

大泉まどかさん(25)*正和電工(旭川)の業務主任*女性用仮設バイオトイレ開発*無臭に自信 快適さ追求   2018/12/09
 おおいずみ・まどか
1993年、旭川市生まれ。旭川商業高を卒業し2011年に正和電工入社。両親と妹と4人暮らし。札幌商工会議所の表彰は、同僚の大黒(おおくに)香那さん、原穂乃佳さん、三鍋温子さんと共に「バイオトイレ女性探偵団」として受賞した。

 バイオトイレの製造・販売に力を入れる旭川の正和電工(橘井敏弘社長)の女性社員チームが、札幌商工会議所の「ものづくりスペシャリスト表彰」の知的財産部門で優秀賞を受賞した。大泉まどかさん(25)はチームの一員。「女性が快適に使える仮設バイオトイレ」の開発に、仲間と共に情熱を傾けた成果だ。(聞き手・旭川報道部 佐藤洋樹、写真・打田達也)

 ――開発のきっかけは。

 「これまでの『汚い、臭い』仮設トイレでは、女性は安心して用を足せません。『女性の活躍』が言われ始め、国が建設現場や農業用の快適なトイレ開発を推進する時代です。社長から提案を受け、女性社員4人がアイデアをまとめ、2015年には優れたデザインに認められる意匠権を取得しました。販売を始めて1年ほどになります」

 ――どんな工夫がされていますか。

 「内部に化粧直しのポーチやカバンの置ける棚や鏡を取り付け、不審者対策に警報ベルやセンサーライトも備えました。おしゃれな服のまま現場に来て作業着に着替え、農作業の合間に授乳できるよう、デラックスタイプには畳1畳のスペースを設けました。『自分たちが使う立場になったら』を基本に考えました」

 ――そもそもバイオトイレとは。

 「水を使わないため水を汚さず、おがくずと微生物の力でし尿を処理します。使用後のおがくずは肥料になる。入社の動機も環境問題に貢献できる、将来性ある分野と考えたからです。ただ最初は『本当かな?』とも思ったんですよ」

 ――というと?

 「便槽におがくずが入ったトイレで、本当にし尿が処理できるのかなと。でもすぐに分かりました。会社のトイレはバイオですし、旭山動物園など設置先の保守点検に行くうちに、うんちもトイレットペーパーも消えるのを自分の目で確かめるのですから。お客さまの問い合わせには『臭いはしません、分解されます』と自信をもって答えます」

 ――仕事のやりがいは。

 「社長以下11人の会社なので、いろんな仕事をさせてもらえ、経験が積めること。16年には、国際協力機構(JICA)の事業でバイオトイレの設置を進めているベトナムに行き、個人のお宅で使い心地やおがくずの状態を確かめたり、現地の小学校で環境教育の授業を担当したりしました」

 ――今後の目標は。

 「社長のアイデアで駆除シカの分解処理装置も造ってしまう会社ですが、それでもバイオトイレが知れ渡っているとは言えません。自然災害が増え、水のない避難所などでトイレに困っているという話をよく聞きます。そんな人たちにぜひ使ってほしい。『1台設置すればその分、水がきれいになる』をモットーに、商品の展示会などできちんとPRしたいです」

 *取材後記
「しっかりした社員。バイオにしても電気にしても基礎をよく知っている」というのが橘井社長の評。その言葉通り、こちらの質問にも筋道の通った話し方で丁寧に答えていただいた。「人と話をするのが好き」だそうで、持ち前の笑顔を絶やさずに顧客と対しているのだろう。取材中に「環境問題への貢献」「災害時に使ってほしい」と何度も口にし、仕事への責任感が伝わってきた。


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