北海道新聞旭川支社
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ヒューマン

豊島勉さん(65)*劇団「河」の復活公演を演出*詩と劇に架橋する十三章*重なる詩が紡ぐ生と死 2017/07/02
とよしま・つとむ
1951年、神戸市生まれ。神戸市内の専門学校でグラフィックデザインを学び、舞台照明の会社に勤務。22歳のとき、自転車で日本一周の旅の途中に「親族がいた旭川を気に入って」そのまま住み着く。舞台・音響・イベント会社勤務ののち、現在はフリーで音響・舞台照明を担当。当麻町在住。

 1986年に活動を停止して31年。小劇場を拠点にした前衛的な舞台で道外からも注目された旭川の劇団「河」の復活公演が7月14~16日、旭川市市民活動交流センター・ココデで開かれる。演出を務める豊島勉さん(65)はかつて舞台照明の“助っ人”として劇団の活動を支えた。キャスト13人が挑むのは約40年前に上演された劇団オリジナル脚本。公演にかける思いを聞いた。(聞き手・旭川報道部 佐藤元治、写真・大島拓人)

 ――今回演じる「詩と劇に架橋する十三章」の通しげいこを見ました。かなり実験的な作品ですね。

 「土蔵を使った自前の小劇場で、1970年代中期に複数回行われた作品です。せりふはなく、童話と詩の文言が発せられます。構成は座付き役者で脚本家だった故・塔崎健二(本名・内藤昭)さん。旭川ゆかりのプロレタリア詩人小熊秀雄の童話『焼かれた魚』に吉増剛造さんや吉本隆明さんの詩6編を入れ込んでいます」

 ――劇団の休眠を解いたきっかけは何ですか。

 「この作品です。僕が劇団を手伝ったのは70年代後半からで、当時の公演は見ていません。しかし、話を聞けば聞くほど興味を持ちました。芝居とは違うし、朗読でもない。『ぜひ見たい』と劇団河の創設メンバーでもある“おばちゃん”=星野由美子代表(89)=に相談したら『私も出るよ』と乗り気でした。それで昨年、新たにキャストを募ることにしたんです」

 ――作品の魅力は何でしょう。

 「『焼かれた魚』は、サンマがふるさとの海に帰るため、自分の身を猫やカラスなどに食べさせることと引き換えに運んでもらい、海に戻った時には骨だけになってしまう話。そのストーリーに、生と死が隣り合わせと感じる詩が重なり合います。暗いはずなのに言葉の響きが美しい。これらの詩を探し出し、つなぎ合わせた塔崎さんの力を改めて感じました。ただ、台本として復活させるまでに5年ほどかかりました。元団員の方が当時のものを持っていたのですが、紙が変色し、判読が難しい状態。いろいろな人の助けを借りて原典の詩を掘り起こしました」

 ――どのような演出を意識していますか。

 「演技指導はもっぱら(厳しい演出で知られる故蜷川幸雄さんにちなみ)『女蜷川』と呼ばれた“おばちゃん”が担っています。『芝居のように演技しちゃ、だめだ』。内容を理解し、心から沸き立つものを自然に表現として出さないと、うそっぽくなるのです。僕はかじ取り役。詩と童話がばらばらにならないよう、一つの流れを作るよう意識しています」


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