北海道新聞旭川支社
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ヒューマン

仲世古善雄さん(73)*「北の国から資料館」を運営してきた*先月閉館 愛され21年*苦渋の決断 ファンに感謝   2016/09/04
なかせこ・よしお
1943年、富良野市生まれ。テレビドラマ「北の国から」の舞台となった麓郷で木材会社を経営する傍ら、まちおこし活動に取り組む。ドラマの登場人物のモデルとなり、会社は「中畑木材」として作品中に登場する。

 テレビドラマ「北の国から」のファンに長年愛されてきた富良野市朝日町の「北の国から資料館」が8月31日、閉館した。1995年に夏季限定で展示を始め、2003年から通年展示に拡大。通年化後の来館者は累計約65万2千人に上る。私財を投じて運営を続けてきた市内麓郷の木材会社社長仲世古善雄さんに、運営に注いだ思いや今後について聞いた。(聞き手・富良野支局 岩崎あんり)

 ――21年間、JR富良野駅前でドラマファンを迎えた資料館が閉館しました。

 「最終日はあいにく台風に見舞われましたが、約350人が来てくれました。受付の担当者のアイデアで、資料館から来場者全員に手作りのラベンダーのポプリをプレゼントしました。今まで資料館を愛してくれたことへの感謝の気持ちです。閉館後のセレモニーには倉本聰先生もいらっしゃり、『ここまでよくやってくれた。ドラマをつくったのは仲世古さんだ』と感謝の言葉をかけられて、涙が出そうになりました」

 ――5月中旬に閉館の方針が報じられてから来場者が急増しました。

 「どっと増えましたね。ドラマの魅力はもちろん知っていましたが、反響は想像以上。以前から館内には『北の国から』への思いを書いてもらうメッセージカードを用意していましたが、5月以降は『閉館と聞いて急いで駆けつけた』『大好きな資料館が無くなってしまうのは悲しい』『お願いだからやめないで』などの声がたくさん寄せられ、読むのもつらかったです」

 ――どのような思いで運営してきましたか。

 「当初は、富良野の中心市街地を通年で活性化させたいという思いでした。当時の富良野観光は、スキー場のにぎわう冬場がメイン。夏場にどうにぎわいを持たせるかと思案し、駅前に夏季限定でオープンしたところ、多くのお客さんが来てくれました。しかし、順風満帆だったわけではありません。近年の冬場は厳しく、1日に2人しか訪れない日もありました。維持が難しくなる中、中心市街地でフラノマルシェなどもオープン。役割を終えたと考え、閉館を決断しました」

 ――資料館の魅力はどのようなところにありましたか。

 「例えば入り口の看板や、脚本のセリフを紹介するパネルの額などは、実際にドラマの撮影セットに使った木材を再利用したものです。何を、どのように見せるかは倉本先生がじっくり監修していました。作品の世界そのものが再現されており、それが皆さんから愛される最大の理由だったと思います」

 ――第1話の自筆原稿やテーマ曲の原譜をはじめ、写真パネル、衣装、小道具など約500点に上る展示資料は今後どうしますか。

 「麓郷にプレハブを2台用意し、そこに一定期間保管します。倉本先生からは新しい資料館の構想についてもお聞きしています。そうなれば、資料は新資料館に引き継ぎたいと思っています」


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