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ヒューマン

寺坂祐一さん(40)*中富良野のメロン産直農家*ネット販売で全国展開*苦情が果実を甘くする     2013/10/13
 てらさか・ゆういち 1972年、中富良野町生まれ。寺坂農園、メロン農家両社長。座右の銘は「行動すれば次の実現」。産業カウンセラーの資格も持つ

 農業生産法人「メロン農家」と販売会社「寺坂農園」を経営する。昨年はメロンを3万3千個売った。フェイスブックで4万6千もの「いいね」がつき、国内農家サイトでは断然の支持を受ける。22年前は多額の負債を抱えた農家だった。メロンを手掛け、次に直売所、そしてインターネットによる販売と事業を広げ、前年度1億1千万円を売り上げ、年商1億円を突破した。

 「長男なので富良野農業高を卒業後、すぐ家業を継いだ。当時はコメ、豆、アスパラ、ニンジンを作った。父親は水道の仕事との兼業で、祖父母と母とのいわゆる三ちゃん農業でした。父は『農業はいいぞ。もうかるぞ』と言ってましたが、現実は厳しかった。売り上げは年630万円あったが、借金は1400万円あった」

 高卒後も同校農業特別専攻科に2年在籍したが、高校教師が家の経済状況を知り、メロン作りを勧めた。最初は甘くないメロンで赤字だったが、先輩農家の助言やニンジンの高値もあり、経営は次第に好転する。だが25歳のころ、メロンはだぶつき、価格低迷、国の農業政策に不安を抱く。26歳で結婚し、コメ作りもやめ、メロン作りと販売に集中する。

 「直売所を上富良野の国道沿いで始めた。でも、最初は暇だった。そんなとき、コンビニで神田昌典さんという経営コンサルタントが書いた本に出合った。世の中には仕組みがあり、戦略があるということを知った」

 売りたい相手に直接訴え、反応を収集する「ダイレクトマーケティング」。米国では販売促進の主流になっていると言われるが、ホームページ、メルマガ、ブログ、フェイスブックなどを駆使しながら、こうした手法を展開し、顧客に寄り添い、需要に対応する。

 「お客は普通のダイレクトメールなら読まないし、信じない。ボールペン持って来て書くなんて、絶対動かない。そんなやり方で、まして大手と競合しても勝てない。値引き合戦になるだけ。でも富良野の野菜はちょっと高いけどおいしいんですと、とがった部分を出すと、消費者はこちらを向いてくれる。未開拓部分を強調すれば競合しなくて済む。申込用紙も他社を調べ、お客の手間がいらない様式にするなど研究している」

 メロンは甘み15〜16度を目指し、14度以上甘くなくては売らない。ハウス33棟で自家発酵肥料を使って甘みを追求しているが、それでも1棟千個丸ごと捨てたこともあった。

 「詐欺やモンスタークレーマーに頭を悩まされる。従業員から泣き付かれるが、次第にクレーム処理ができてきた。苦情は『ハッピーコール』と捉え、良いメロン作りにつなげているから。火事になれば何を持ち出すか分かりますか。それは顧客リスト。うちには2万人のお客さまがいます。通販はリピートが命です」

 メロンやトウキビの時期は終えたが、地元のタマネギ、ジャガイモや南富良野のニンジン、上富良野の越冬キャベツなどの販売や受注で忙しい。ドレッシングも手掛ける。2社で社員7人、臨時職員31人を抱え、震災被害を受けた宮城県からも人を受け入れている。

 「最近は農産物の生産から加工、販売を手掛ける6次産業化の講習会で講師に呼ばれた。成功は自分を解放してこそ。自分自身がブレーキをかけているのに気づいてほしい」

 文と写真 富良野支局 鈴木雅人

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