北海道新聞旭川支社
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ヒューマン

大西人史さん(46)*「三段山クラブ」代表*「深雪滑走」安全に*予見できぬ雪崩 備えを     2010/12/12

 おおにし・ひとし 1964年、旭川市生まれ。大学時代にワンダーフォーゲル部に所属。独立地方行政法人道立総合研究機構に勤務の傍ら、雪崩事故防止研究会や上富良野冬期山岳事故防止委員会に加盟し、スキー情報をhttp://www.sandan.net/で発信している。

 ゲレンデとして整備されていない、いわゆる「深雪滑走」を楽しむスキーヤーやスノーボーダーが増えている。一方、圧雪されていない斜面では、雪崩の危険が常にある。近年では、2007年11月に十勝岳連峰の上ホロカメットク山(1920メートル)で4人が雪崩に巻き込まれ死亡した。講演会などを通じて雪崩の危険性を愛好家に伝えているのが、十勝山系の山岳スキー愛好家でつくる「三段山クラブ」の大西人史代表だ。大西さんに深雪滑走の魅力と、雪崩の怖さと対処法を語ってもらった。

(旭川報道部・五十嵐知彦)

 −−「三段山クラブ」というのはどういう組織ですか?

 「1999年につくった、主に十勝山系で活動するバックカントリーテレマークスキー集団です。ホームページなどを通じて仲間が増え、よく一緒に山へ行く仲間は現在10人くらい。インターネットを通じてつながる、非常にゆるやかな団体です」

 −−団体の名称でもある三段山の魅力は?

 「三段山(1748メートル)の標高自体は低いですが、山頂から見る十勝岳(2077メートル)などの景観は絶景です。また、適度な傾斜があり、雪質も深い粉雪からガリガリの頂上付近まで実に多彩に変化し、何度滑っても飽きません。下山後の温泉も大きな魅力です」

 −−三段山も含む十勝山系では雪崩が増えているそうですが、なぜですか?

 「山スキーやスノーボードの人気エリアとなったからです。雪崩は地形・雪質・天候の3要素それぞれに回避できる術があるとされ、雪質や天候によっては危険な地形を避けるという判断を下します。ただ、雪崩が発生しやすい地形は木の生えていない斜度35〜45度の急斜面。これは深雪滑走に適した斜面でもあります。したがって、スキーヤーは『雪崩が発生しやすい地形』を避けにくく、必然的に、雪崩の可能性も高まるわけです。これは大きなジレンマです。さらに、雪崩の発生メカニズムはとても複雑で、完全に予見することはできません。私も最近では昨年4月、滑降前にその斜面をチェックしようとして雪崩に流されました。大事に至らなかったのが幸いでしたが」

 −−では、こうした危険には、どう対処すればいいですか?

 「雪崩に巻き込まれるのを前提に準備しなければいけません。少なくともビーコン(電波受発信器)、埋没者を掘るシャベル、プローブ(埋没者を探す棒)を携帯し、使いこなす練習をしてほしい。問題は単独登山者がどんどん増えていることです。単独では雪崩に巻き込まれて埋まってしまうと、まず助からない。万一の場合、埋まった仲間を15分以内に助け出さなければいけないので、装備を持った上で、4〜8人のパーティーで山を楽しみたいですね」

 −−山は危険ばかりでなく、新雪を滑る魅力がありますね。

 「新雪滑降は本当に素晴らしく、あの爽快感は一度体験すると病みつきになるでしょう。ただ、危険と隣り合わせなことは変わりありません。近年は、太いスキー板で急斜面の深雪を派手に滑走することに目が行きがちですが、ちょっと細めのスキー板をはいて、緩やかな斜面を歩くように楽しむネイチャースキーというジャンルもあります。これならば、雪崩の危険性はずっと低いですよ」

 

記者のメモから
妻と双子の息子を旭川に残して現在、美唄市で単身赴任中だ。「雪崩を完全に予見することはできない」とし「雪崩の心配の少ない斜面を滑る楽しみも提唱したい」と持論を展開。雪崩の犠牲になれないという家族への優しいまなざしが光る。
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