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ヒューマン

工藤和彦さん(36)*ボーダレスアートギャラリー運営 NPO法人ラポラポラの代表理事*障害者の作品は本当のアート*魅力に正当な評価を 2007/03/11
工藤和彦さん

<略歴>
  くどう・かずひこ 神奈川県小田原市出身。高校卒業後、滋賀県・信楽の窯で3年間修業。剣淵町の「剣淵北の杜舎」で陶芸指導に携わり、1996年から創作活動に専念。旭川市東山で妻と子供3人と暮らす。

 旭川市中心部のマンション一階に昨年十二月にオープンした「ボーダレスアートギャラリー・ラポラポラ」。障害のある人の作品を中心に常設展示する、全国でも数少ないギャラリーの一つだ。運営するNPO法人ラポラポラの代表理事で、自らも陶芸家として創作活動をする工藤和彦さんに、障害のある人たちが作り出すアートの魅力と可能性について聞いた。(旭川報道部 小川郁子)

  −−ラポラポラとは、どんなギャラリーですか。

  「『ラポラポラ』は、アイヌ語で羽ばたくという意味です。展示しているのは知的、精神に障害のある人の作品が中心。作品をモチーフにした布袋や食器など雑貨類も販売しています。十一日までは、製薬会社のゾウの人気キャラクター『サトちゃん』の複製を、十年ほど前から作り続けている富良野市の横山篤志さんの個展を開催中。オープン以来、ボランティアや、雑貨を買うことで活動に理解、協力してくれる人が増えています。作品に魅力があるから人が集まるのだと思います。今まで評価されたり、社会に出ることの少なかった作品の発表の場ができたことで、つくり手を支える父母や施設の職員ら周囲の人たちが元気になっているのがうれしいです」

  −−障害のある人の作品の魅力はどんなところですか。

  「一般のアーティストは創作活動に意味を求めますが、彼らにあるのは『ものを創(つく)りたい』という執着や衝動だけ。そこに技巧や意味はなく、名声やお金への欲がありません。例えばイクラが大好きで、一緒に寝たいからとパジャマにイクラを描く人がいます。漢字に執着があり、意味は関係なく、ただびっしりと漢字を列挙する人もいます。どちらも無心。好きだから、描きたいからと、あふれるように作っていく。私たちは小さいころから美術教育を受け、知らないうちに美術の概念が固まっています。それが積み重なって今の文化が構築されてきたという一面はあるものの、私もつくり手の一人として、固定概念がない彼らの中にこそ、本当のアートがあるのではと感じます」

  −−彼らの作品は、なぜ知られていないのでしょうか。

  「発表の機会が限られるうえ、先入観から正当な評価がされていない。彼らの作品を目にするのは施設の作品展示会やチャリティーバザーなどで、一般の美術シーンに出てくることはまず、ありません。自らの情緒の安定のために、毎日同じものを作り続ける人もおり、近くにいる施設スタッフや親も、貴重なアートだということに気付かない。プロデュースする専門家もいません。欧米では『アウトサイダーアート』と呼ばれる市場があり、高いものは億単位の価格で売買されています。日本では二○○四年にようやく、滋賀県近江八幡市に、古い町屋を改装した『ボーダレス・アートギャラリーNO−MA(ノマ)』が開館しました」

  −−今後の活動は。

  「道内の埋もれた作家を探し、紹介していきたい。社会の関心が高まれば、正当な評価を受けられるようになるでしょう。作品が売れ、商品化できれば、彼らの自立にもつながる。道内、国内の作家の作品を保護し、データベース化も実現させたい。世界に情報発信すれば価値はますます高まり、欧米の市場にも対応できるようになるでしょう。『ラポラポラ』の名に込めたように、北海道発で世界に羽ばたかせることができたら、と思います」

  ◇

 ボーダレスアートギャラリー・ラポラポラは旭川市七の六、シャンノール緑道一○一。(電)0166・29・3836

記者のメモから
  語り口は温和で、笑うと目がきゅっと細くなる。大胆な発想、楽しい作品について話す時は本当にうれしそう。だが一転、厳しさを見せる瞬間も。「ボーダレスアートという言葉自体、本当はおかしい。既存のアートと障害者のアートの壁をなくしたい」。優しさと力強さを併せ持つのが工藤さんの魅力の一つだ。
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