北海道新聞旭川支社
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旭山動物園わくわく日記

あざらし館も雪不足*「流氷ひろば」今年は断念   2020/03/08
今年は「流氷」がない環境で越冬しているゴマフアザラシ

 例年、旭山動物園のあざらし館ではゴマフアザラシたちが泳いでいるプールを凍らせて、流氷がある環境を再現する「流氷ひろば」をつくっています。なぜ流氷かというと、野生のゴマフアザラシにとってこれがとても大事で、必要なものだからです。

 ゴマフアザラシの出産、子育ては流氷の上で行われます。ゴマフアザラシの子どもは白っぽいふわふわした毛で生まれてきますが、これは流氷の色にまぎれ、敵から狙われにくくなるためと考えられています。アザラシとはいえ生まれてすぐには泳げませんし、陸でもうまく動けません。捕食者から見れば格好の獲物になってしまいます。流氷の上で景色にまぎれる保護色に身を包んでいれば、独り立ちの時まで生き残りやすくなる、ということでしょう。

 ゴマフアザラシとともにある流氷。その環境での生態を再現する流氷ひろばですが、プールは自然と凍るわけではなく、水温を下げ、雪を重機でたっぷりと投入するなど手順があります。完成させるには強い冷え込みが数日続く時に、プールにたくさんの雪を入れる必要があります。ただ、今年は例年ほど冷え込まず、記録的な少雪になったことから、流氷ひろばづくりを断念することになりました。天候という自然が相手なので、思い通りいかない年もあるということです。

 さて、そんな旭山のゴマフアザラシたちですが3月に出産シーズンを迎えます。妊娠している可能性がある個体がいるので、うまくいけば3月下旬ごろに子どもが生まれるかもしれません。昨年も2頭が生まれ、元気に育ちました。今年の繁殖はどうなるか、みなさんも楽しみにしていてください。(あざらし館担当 中野奈央也)


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