北海道新聞旭川支社
Hokkaido shimbun press Asahikawa branch

旭山動物園わくわく日記

チンパンジー、別の群れへ*信頼関係構築 ドキドキ   2019/12/23
群れを移り、キャロ(右)に身を寄せるニナ

 旭山動物園ではチンパンジーの雄7匹、雌5匹を二つの群れに分けて飼育しています。チンパンジーは、ヒトの遺伝子の大半を持っておりヒトに最も近い動物。社会性や知能の高さ、見た目もヒトによく似ています。

 筋肉質な雄は体毛を逆立て暴れたり、叫んだりして力をアピールします。群れが二つに分かれているのも雄同士の闘争があったためです。一方、雌は出産、子育てをして愛情ある姿を見せてくれます。8~10歳頃からお尻の性皮がピンク色に腫れる発情が約35日周期でおとずれます。その後、群れから出て、13、14歳頃に初産をむかえます。

 そんな中、子どものニナ(6歳)に9月、発情の兆候が表れました。飼育下では少し発情が早いようです。今の群れのメンバーで妊娠すると近親交配となるので、もう一つの群れへ移すことにしました。

 ニナはまだ母親に甘えたい年頃です。不安がある中、11月にキーボ(51歳)の群れとおり越しに対面。まず、雌のイブ(28歳)と同居させましたが、残念ながらイブはニナをたたくなど荒い行動をとりました。

 次に雌のフルト(39歳)と子のガッツ(4歳)と同居を試したものの、フルトはガッツと遊んでいたニナを攻撃します。さらにキーボとの同居では、ニナは大きな手にびっくりして意気消沈。顔や首に少し傷を負い大声で泣きわめきました。

 最後に残されたのが一番の暴れん坊、雄のキャロ(11歳)。そこで、まさかの展開が待っていました。自分の子を守ろうと、イブとフルトがニナを追い詰めたところ、キャロが仲裁に入りました。ニナはキャロのそばにいれば安心ということで落ち着きを取り戻しました。繊細な行動をとってくれたキャロに感謝状をあげたくなりました。

 キーボの群れの一員として今後さらに信頼関係を築いていくことを願っています。冬期開園中は、群れを1日交代で展示しています。ニナの様子をぜひ見に来てください。(ちんぱんじー館担当 髙井正彦)


戻る