北海道新聞旭川支社
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旭山動物園わくわく日記

片翼のエゾフクロウ*人との共生 考える契機に   2017/12/18

 主に北海道全域に暮らすエゾフクロウ。園内で飼育される8種のフクロウのうちでは中型で、成鳥の体長は約30~50センチ、翼を広げると約1メートルになる。淡い灰色がかった羽毛に覆われ、丸い顔に黒い目が特徴だ。

 旭山で現在暮らすのは5羽。このうち4羽は「道産動物舎」で公開され、枝から枝に飛び回ったり、風の当たらない小屋の隅に集まって身を寄せ合って眠ったりする姿が観察できる。

 残りの1羽が「つむぎ」(推定2歳、性別不明)だ。左の翼が骨折した状態で発見され、市内の動物病院に運び込まれた。旭山は通常、保護された野生動物は受け入れないが「けががひどく野生に戻すことは難しい」との病院の相談を受け、特例として今年7月に引き取った。現在は人に慣れさせるため職員が働く事務所の中で放し飼い中だ。

 坂東元園長(56)は、つむぎのけがを「エサを探しに道路に出たところを車にひかれたのでは」と推測する。重傷だったため、翼の切除を決断。飼育担当で獣医師の池谷優子さん(44)が「断翼手術」を行い、つむぎは左の翼を失った。もう飛ぶことはできない。

 ただ術後の経過は良好で、つむぎは今、元気いっぱい。今月初めから事務所で始めた慣らし飼育が順調にいった後、年明けにも担当飼育員らが動物の解説をする企画「ワンポイントガイド」に登場させ、来園者に近くで見てもらうことを計画している。

 野生で暮らしたつむぎが、なぜ事故にあったのか。野鳥を取り巻く現状や、人との共生はどうあるべきなのか。池谷さんは、そんなことを片翼のつむぎを通じて、入園者に語りかける機会を楽しみにし、「羽毛の中の温かさや、意外と長い足なども見て、知ってほしい」と話している。

 一方、道産動物舎の4羽は雄3羽と雌1羽で、今年つがいができ、雌が卵を産んだ。ただ、ひなはかえらなかった。エゾフクロウの産卵時期は例年3月。池谷さんは「巣の材料を変えて、快適な巣箱になるよう工夫したので、来年こそ繁殖に期待している」と話した。(川上舞)


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