北海道新聞旭川支社
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旭山動物園わくわく日記

タンチョウ*興奮するほど頭が赤く   2017/03/06
頭頂部の赤色が鮮やかなタンチョウ。つがいの相手は生涯変わらない

 鮮やかな赤色の頭が特徴のタンチョウは、漢字では「丹頂」と書く。「丹」は赤、「頂」はてっぺんを意味し、名前の由来は一目瞭然だ。ただ、その頭頂部の赤色が、露出した皮膚に集まる筋肉のこぶから透ける血の色だと知ると驚く人も少なくない。

 「赤い羽毛が生えていると思われがちで、近くで見るとびっくりされます。ニワトリのトサカも同じです」。飼育担当の高井正彦さん(45)が、楽しそうに教えてくれた。

 旭山動物園では2011年春に改修したタンチョウ舎で、2羽のつがいを飼育する。雄の「丹星(たんせい)」(29歳)、雌の「ノモ子」(21歳)。細い脚で優雅に歩き、池のそばに張られたガラス窓からは、水につかったりエサを食べたりする様子をじっくり観察できる。見分ける際は、体が大きく、くちばしがかみ合っていないのが丹星だ。

 2羽は、2004年に釧路市動物園からやって来た。繁殖が期待され、08、09年にひなが生まれたがすぐに死んだ。14年にもひなが誕生。順調に育ち、釧路市動物園に引き渡したが昨年、事故で死んだという。

 国の特別天然記念物で絶滅危惧種。保護活動が進み、旭山も卵のふ化に積極的に取り組む。求愛ダンスを踊る姿に魅了されるファンも多いが、繁殖期の3~5月、ダンスや親睦を深めるために鳴き声を交わす「鳴き交わし」が旭山でも見られることがある。

 ところで、頭の赤い部分は興奮するほど血液が集まり、赤色の面積が広がるそうだ。特に警戒心が高まる繁殖期や子育て期には飼育員の高井さんが放飼場へ足を踏み入れるだけでも、後頭部まで真っ赤に見えることもあるという。

 夫婦の絆が強く「つがいの相手は生涯変わらず、常に2羽で行動する」と高井さん。仲むつまじい様子はうらやましい限りだが、決して冷やかして2羽を驚かせたりしないよう、来園者もマナーを守って観察することが大切だ。

 狩猟による乱獲や湿原開発で1952年の道の調査で釧路管内で33羽しか確認できなかったタンチョウ。今年2月28日に道が発表した越冬分布調査では、釧路、根室、日高、十勝の4管内で約1200羽を確認している。

 羽を広げると約2メートル40センチにもなる優雅な姿をぜひ観察してほしい。(川上舞)


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