北海道新聞旭川支社
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旭山動物園わくわく日記

雪上を歩くペンギン*習性生かし運動不足解消   2016/12/19
運動不足解消のため、歩くキングペンギンたち=旭川市旭山動物園提供

 今年は例年に比べ早い時期に雪が降り、園内は11月初旬から雪景色となりました。旭山動物園では雪が積もる12月中旬から3月下旬にかけてペンギンの散歩を行っていますが、今年はなんと11月の中旬から始めることになりました(この段階では不定期で、練習として実施。正式な開始は12月10日から)。

 このペンギンの散歩はショーや芸をしているものではなく、キングペンギンの野生での行動を再現したガイドの時間です。始めたきっかけは、キングペンギンの冬季の運動不足を解消するためです。キングペンギンは冬になるとあまり動かず、泳がなくなり、どうしても運動不足になってしまいます。そこで野生での行動に注目したのです。

 野生のキングペンギンは繁殖期になるとコロニーという集団を作り、そこで繁殖の相手を見つけます。規模はまちまちですが、大きなコロニーは数万羽が集まります。このコロニーは海から数キロメートル内陸に入ったところに作られます。キングペンギンは魚をとりにいくために、コロニーから海に向かって歩いて行きます。

 おそらくたくさんの方が、ペンギンは歩くのが苦手な生き物だと思っていると思います。しかし、ペンギンの中でも特にキングペンギンは日常的に歩く生き物なのです。また、ペンギンの散歩では集団でぞろぞろと歩きますが、これも彼らが元々持っている習性。高い集団性を持ち、集団で移動するのです。

 しかし、この集団の中にはボスやリーダーは存在しません。ペンギンの散歩では先頭を歩くペンギンが偉いと思われることが多いのですが、先頭は誰でもよいのです。ペンギンはかわいい生き物というイメージが多いと思いますが、氷点下10度の吹雪の中を歩いて行くキングペンギンたちを見ると、なんてたくましく美しい生き物なんだろうと感じます。

 皆さまも冬にしか見ることができないペンギンたちの魅力を感じていただければと思います。(ぺんぎん館担当・獣医師 佐藤伸高)


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