北海道新聞旭川支社
Hokkaido shimbun press Asahikawa branch

旭山動物園わくわく日記

両生類・は虫類舎*フナ、エビ…水場の自然再現   2016/05/23
道内の水田やため池で暮らす魚類や両生類、昆虫を集めた新コーナー「水場の生き物たち」

 旭山動物園の「両生類・は虫類舎」に4月の夏の開園から、新たにコーナーが設けられた。道内の水田、ため池、川べりで暮らす生き物たちを集めた水槽「北海道の水場の生き物たち」。1967年の開園当初から飼育されていた最後の動物で、昨年5月に死んだワニの水槽を活用した。

 幅4メートルほどの水槽の手前には水が張られ、フナやドジョウといった魚類やエビ、ガムシやゲンゴロウなどの水生昆虫がいる。奥のスペースには土や岩があり、昆虫類やカエルが暮らす。担当の白木雪乃さん(35)は旭川市内の農家や地主の協力を得ながら、新たな仲間を集めている。

 まだまだ水槽の大きさと比べて生き物の数は少ないが、じっと足を止めて観察すると、岩の上にたたずむエゾアカガエル、水中の岩間に潜む抱卵中のエビ、よたよたと泳ぐガムシが見られる。

 「来園者が『気持ち悪い』『早くこんなところ出よ』と言うのを聞くと、悲しくなります。ここにいる生き物たちが北海道の自然を支えているんですから」。白木さんはこう語る。

 旭山では、ホッキョクグマやアザラシ、ペンギンなど食物連鎖の頂点にいる動物が人気を集め、は虫類舎にいる生き物たちは敬遠されがち。でも、こうした動物たちのエサになるのが身近な昆虫や両生類、魚類だ。実際、国の特別天然記念物のタンチョウは昆虫やカエル、ワシやタカはヘビを食べている。

 旭川市がまとめた2015年度の「あさひかわの農業」によると、10年度の市内の水田の耕地面積は1990年度と比べても2割近く減っている。白木さんは「田んぼが減った分、虫やカエルが暮らしにくくなっている。動物園に展示しているオタマジャクシを珍しがる親子も多いんです」と残念がる。

 自宅でも両生類、爬虫(はちゅう)類、ネコなどを飼っている白木さん。「かわいいものを守ろう、見たくないものは排除しようという世の中では悲しい。水槽を通して、足元にいる小さな生き物にも目を向けてほしい」と訴えている。(笠原悠里)


戻る