北海道新聞旭川支社
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旭山動物園わくわく日記

ホッキョクグマ*新しいペアの繁殖に期待    2016/02/01
落ち着かない様子を見せる雄のイワン。離れたところからイワンを見つめるピリカ(左奥)

 昨年、ホッキョクグマの雄「イワン」(15歳)との間で交尾が確認された雌の「サツキ」(24歳)と「ルル」(21歳)。出産の準備のため、雌2頭は11月上旬から産室に入ったが、ふんの中のホルモンを検査した結果、妊娠の可能性が低いことが分かった。飼育担当の大内章広さん(31)は「4月に担当者が変わるなど環境の変化が刺激になるかと思ったが、繁殖に結びつかず残念」と肩を落とす。

 旭山動物園は1974年に国内で初めてホッキョクグマを繁殖させ、81年までに計5頭を誕生させたが、その後は成功例がない。

 野生のホッキョクグマは、11月ごろに雪の下に巣穴を掘り、出産する。旭山では、巣穴に見立てた真っ暗で狭く静かな産室を用意し、交尾を確認した雌を移動させるが、産室内に入ると、野生と同様、絶食になるため、高齢の雌2頭の負担は大きい。

 今回の繁殖失敗を受け、昨年12月下旬からは、イワンは、比較的若い雌の「ピリカ」(10歳)との“お試し同居”を始めた。20歳を超えて初産となるサツキとルルに繁殖は難しいのではないかとの判断だった。

 1月上旬、雪が舞う中、落ち着かない様子で放飼(ほうし)場をうろうろするイワン。ピリカはお尻を壁につけ、イワンが近寄って来ると、威嚇することもあった。ピリカはこれまで雄との同居の経験がないため、興奮して暴れるなどした場合に備えて、麻酔を準備するなどした。同居は最初は30分と、短い時間から始め、徐々に長くし、現在では、一定の距離を保ちながらだが、午後の時間帯を一緒に過ごせるようになった。「互いに大人になり、距離を保てるまでに成長した」(大内さん)という。

 大内さんは「動物園の一番大きな仕事は繁殖。ホッキョクグマは人気者なので、イワンとピリカのペアを成立させたい。小さな変化を見過ごさないよう、冷静さも忘れないようにしたい」と気を引き締める。繁殖期は4~5月。それまでに互いを繁殖相手として認め合うことができるのか。新しいペアの今後が楽しみだ。(古谷育世)


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