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旭山動物園わくわく日記

キングペンギン*巨大な「キウイ」 実はヒナ    2015/11/30
成鳥に交じって、のしのしと歩くキングペンギンのヒナ(左から2羽目)=旭川市旭山動物園提供

 今年はキングペンギンが7月と9月に合わせて2羽ふ化し、すくすくと育っています。まるで巨大なキウイフルーツのような姿で、のしのしと歩いています。ヒナを見たお客さんは皆「なんでこんなに大きいの」と口をそろえて言います。

 見た目は成鳥よりも大きいのですが、ヒナの羽根はフワフワしているので実際の中身は成鳥よりも小さいです。ヒナたちは11月初旬から外の放飼(ほうし)場にも出るようになりました。ヒナだけになると、大きな声で鳴いて親を呼びます。親たちはすごいスピードでヒナのもとに戻ってきます。まだまだ親に甘えている時期です。

 キングペンギンの繁殖期は春。3~4月に交尾し、4~5月に産卵します。卵の重さは300グラム程度で、家庭の冷蔵庫にあるニワトリの卵が70グラムとすると、4倍もあります。産卵はメスですが、抱卵(卵を温めること)と育雛(いくすう)(ヒナを育てること)はオスとメスが交代で行います。

 メスが産卵すると、抱卵が始まります。巣を作らずに、自分の足の間で抱卵と育雛を行います。五十数日間抱卵をすると、ヒナがふ化。生まれたばかりのヒナは羽根がほとんど生えておらず、色も灰色をしています。重さは約250グラムで、ヒトの手のひらに乗るくらい。

 ヒナはおなかが空くと、ピーピーと大きい声で鳴きます。親は鳴き声を聞くと、胃の中から魚をドロドロに溶かしたものを吐き出して口移しで与えます。ヒナはエサをねだる時以外はずっと寝ています。ふ化してから徐々に、体に茶色の羽根が生えてきます。野生下では土のあるところで育雛をするため、茶色の羽根が保護色になると考えられています。ふ化してから1カ月もすると全身に茶色の羽根が生え、8カ月ほどすると、茶色の羽根が徐々に抜けて下から成鳥と同じ羽根が現れます。

 そして、ふ化後9カ月で巣立ちを迎えます。来年の春にはヒナも成鳥の仲間入りです。日々成長しているヒナの様子をご覧いただければと思います。(ぺんぎん館担当・獣医師 佐藤伸高)


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