北海道新聞旭川支社
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旭山動物園わくわく日記

シマフクロウ*翼の骨折癒え待望の復活    2015/07/20
右の翼を骨折後、順調に回復してシマフクロウ舎に帰ってきた「ロック」

 今春に右の翼を骨折し、バックヤードで治療を受けていたシマフクロウの「ロック」(5歳、雌)が今月初め、約2カ月半ぶりにシマフクロウ舎に帰ってきた。旭山動物園で唯一のシマフクロウを一目見ようと多くの来園者が訪れている。

 フクロウ類を担当する獣医の池谷優子さん(41)がロックに異変を感じたのは、4月下旬。臆病で警戒心が強く、いつもは獣舎上部の止まり木で池谷さんににらみを利かせているが、地上をうろうろし、近づいても飛ぶ気配はない。体が右側に傾き、えさ入れは全く減っておらず、悪い予感がした。レントゲン写真を撮ると、右の翼が折れているのが分かった。

 池谷さんは今春、道外の動物園から旭山動物園に転職したばかりで、シマフクロウを治療するのは初めて。ロックを刺激しないよう、掃除を控え、えさもなるべく遠くから静かに与えるように心がけた。それでも、骨折による痛みのためか、ロックは食欲がなく、3・4キロあった体重は、3・2キロに減ってしまった。

 本来、シマフクロウは魚を食べるため、動物園でもホッケや銀ザケ、ニジマスを与えている。食事の量を増やそうと、ヒヨコやウズラを与えてみたものの、なかなか食べない。「ごはんを食べてね」。池谷さんが祈るようにえさを与え続けた結果、ロックは元気を少しずつ取り戻した。1カ月半後には、狭いバックヤードで翼をバタバタさせるしぐさを見せた。けがは日に日に回復、シマフクロウ舎に戻すことができた。

 「何もいない獣舎はがらんとしていて寂しかった。ロックが戻ってきて、獣舎が引き締まった感じがしますね」。池谷さんは満足そうな笑みを浮かべた。

 ロックは食欲も戻り、日常を取り戻しつつある。しかし、骨折した原因はいまだ謎のままだ。寝ぼけて止まり木から落ちたとか、カラスに脅かされてびっくりしたなどいろいろ原因を考えたが、いずれも推測の域を出ない。池谷さんは今も骨折の原因を探るとともに、再発防止に向けた安全策を考えている。(古谷育世)


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