北海道新聞旭川支社
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旭山動物園わくわく日記

トレード*血統新た 「イケメン」に期待     2015/01/26
おたる水族館から来たマンタロー(旭山動物園提供)

 昨年(2014年)11月13日、旭山動物園から小樽市のおたる水族館へ雄のゴマフアザラシ「カナメ」が旅立ちました。体が全体的に黒っぽく、餌をねだる時に短い前足でおなかをペシペシたたき、とても愛嬌(あいきょう)がありました。

 代わりに、おたる水族館から雄の「マンタロー」が旭山動物園に入園しました。いわゆるトレードです。動物園業界ではよくあることで、同じ個体で飼育を続けていると、繁殖でどうしても血統が偏り、将来「近親交配」が起こる可能性が高まります。それを避けるために動物を交換し、新たな血統を導入するのです。

 動物を輸送する時は輸送箱に入れて運びます。が、素直に箱に入ってくれる動物はほとんどいません。ではどうするか? 水中を猛スピードで泳ぐアザラシを捕まえるのは不可能です。勝負は陸上です。

 搬出の前日、いつものように餌を用意します。そして、柵の外に板を隠し持ったスタッフ数人が待機します。アザラシは餌が欲しくてプールから上がってきます。できるだけプールから遠くへ誘い、ここからが緊張の一瞬! タイミングを計り、スタッフが板で壁を作り、アザラシがプールに戻れないようにします。板で囲い込み、奥の部屋へ収容します。

 「えっ、それだけ?」と思うかもしれませんが、餌で誘うスタッフも、外で待機するスタッフもアザラシに雰囲気を悟られないようにとヒヤヒヤなんです。もしアザラシが気づいてプールに戻ったら一巻の終わり。警戒心を抱いたアザラシは何日もプールから上がってくれないでしょう。今回は無事成功! 翌朝、部屋に隔離されたカナメに逃げるプールはありません。板で囲って箱へ追い込み、車で小樽へ運びました。

 おたる水族館に到着し、プールにカナメを放した後、今度は同じ箱にマンタローを入れます。あらかじめプールの水が抜かれていて、水族館スタッフ数人が籠でマンタローを囲い込みました。「ところ変われば道具や方法もいろいろだなぁ」と感じました。無事、旭山に到着し、マンタローをあざらし館へ放ち、トレード完了です。

 目がクリっとして色白(ゴマ模様が少ない)。スタッフ一同「イケメン?!」のマンタローにぜひ会いに来てください。そして今後、マンタローが旭山で父になる日をお楽しみに。(飼育担当主査・中田真一)


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