北海道新聞旭川支社
Hokkaido shimbun press Asahikawa branch

旭山動物園わくわく日記

チンパンジー*群れに政治的駆け引き     2014/05/26
窓から顔をのぞかせるチンパンジーの親子(旭山動物園提供)

 野生のチンパンジーは20~100頭ほどの群れで暮らします。雌は9~11歳くらいになると別の群れに移り、雄は大人になっても生まれた群れに残って父系社会を形成します。

 旭山動物園では13頭が野生本来の複数の雄と複数の雌という構成(複雄複雌(ふくゆうふくし))で、二つの群れに分かれています。

 群れには順位があります。大きな声や壁などをたたいて大きな音を出し、物を投げて強さをアピールする行動「ディスプレイ」で順位が決まります。雄は順位が重要で、順位をめぐり闘争になることもあります。

 過去に父キーボ(45)と息子シンバ(18)が闘い、シンバが勝った結果、一つだった群れを二つに分けたことがありました。

 今年4月にはシンバと弟ピースケ(12)が争い、お互いけがをして痛み分けしました。闘争は発情した雌の奪い合いを機に起こることが多いのですが、今回は雌に発情も見られず、予想外でした。

 これまでシンバとピースケは行動を共にし、寝室でも一緒に過ごしていました。しかし闘争後は同じ寝室に入らなくなり、朝もお互い顔も合わせず、あいさつもしないなど、よそよそしい雰囲気になりました。

 関係が悪化したシンバとピースケとは逆に、雌のミコ(39)はこれまで雄のディスプレイの時に攻撃の対象にされることが多く、けがが絶えなかったのですが、闘争後は雄からの攻撃がなくなり、大事にされるようになりました。また、シンバと行動を共にする相手がピースケからタケル(8)に変わりました。

 これは、もし次の闘争が起きた時、自分の味方にするための政治的駆け引きです。こうした行動を見ると「私たち人間と同じだなぁ」とあらためて感じます。

 複雄複雌の群れは、発情した雌をめぐる闘争が起きて管理しづらいのですが、チンパンジー特有の行動を見ることができます。どのような群れでの飼育が良いのか、試行錯誤しながら見極めようと思います。(飼育担当主査・チンパンジー担当 丸一喜)


戻る