北海道新聞旭川支社
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旭山動物園だより

共生展示*自然に近い姿 引き出す     2012/06/08
主に水辺で過ごすカピバラと陸上を駆け回るクモザル

 水辺でのんびり過ごすカピバラと、対照的に木を模した鉄柱やロープを器用に駆け回るクモザル。日ごとに暑さが増すこの時期、南米に生息する両者はより生き生きとした姿を見せている。

 動物の生態を間近に見てもらう「行動展示」に力を入れる旭山動物園は、同じ地域で暮らす動物を一緒に飼育する「共生展示」にも取り組んでいる。飼育展示係の畠山淳さん(38)は「どれだけ工夫しても、動物園は自然界より単調な場所になってしまう。混合飼育で刺激を与えることで、動物のより自然な姿を引き出したい」と狙いを話す。

 クモザルとカピバラが暮らす「くもざる・かぴばら館」は2005年8月にオープンし、その先駆けとなった。同居を始めた直後に1度、クモザルがカピバラにかまれて死ぬ事故も起きた。だが、現在いる6頭はお互いに相手を意識しながらも、適切な距離を保って過ごしているという。

 現在、クモザルは雄のハープ(7歳)と雌のジュン(推定30歳)とチャコ(12歳)、カピバラは雄の泉水(いずみ)(2歳)と雌のピョン(6歳)とゴンベ(6歳)がいる。畠山さんは「6頭とも性格が異なり、違ったしぐさを見せる。それぞれにファンがいて、本州からお目当ての1頭を見に来る人もいます」

 同園はキリンとホロホロチョウ、アザラシとオジロワシなども共生展示している。

 近年、クマやエゾシカと人との問題が深刻化しているが、畠山さんは「共生展示には『ルールを守れば人と野生動物も共生できる』というメッセージも込めている」と強調し、もぐもぐタイムなどで来場者に語りかけている。(中沢広美)


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