北海道新聞旭川支社
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旭山動物園だより

ワシ・タカを学ぶ会*野外を飛ぶオオタカ人気     2011/02/04
オオタカを腕に乗せ、見学者に生態を説明する大内さん

 展示飼育係が動物の生態などについて詳しく解説する「なるほどガイド」。大内章広さん(26)が担当する「ワシ・タカを学ぶ会」では、オオタカが野外で放たれ飛ぶ姿が人気となっている。

  1月下旬のある日、大内さんの腕から飛び立ったオオタカは、50メートル先の木の枝に止まって辺りを見ていたが、大内さんがエサを見せると急降下、風を切って腕へと戻ってきた。

  驚くべき動体視力で500メートル先からでも獲物を見つけられるという。翼の長さが体の割に短く、狭い木々の間もスピードを落とさずすり抜ける。止まるときや曲がるときは尾羽を広げることでスピードを微調整する。

  それらを目の当たりにした見学者たちは「本当にすごいスピード」と驚き、「まさか動物園で、おりの外を飛んでいる様子を見られるなんて」などと喜んだ。

  鷹匠(たかじょう)さながらにオオタカと付き合う大内さんだが、トレーニングは7年に及ぶ。このオオタカは動物園でふ化した個体で、必ず人がいるところで餌を食べさせるなどして警戒心を薄めた。何日も餌を与えず、空腹で餌のことしか考えなくなったところで皮手袋の上で餌をやることを繰り返し、餌付けした。

  体長約50センチ、体重はわずか600グラムで1日に100グラムの肉を食べる。体重の3割は羽ばたきに使う胸の筋肉で、飛ぶ力が衰えないようトレーニングはほぼ毎日行う。大内さんは餌や運動の量を厳密に管理し、体調や好みなどを感じ取れるよう、毎日1~2時間、腕に乗せて観察するという。

  旭山は動物に芸やショーをさせない。動物が本来持っている野生での能力を見てほしいという思いがあるからだ。しかし、「オオタカに関しては、トレーニングを積むことで能力や魅力を知ってもらえる。そのためにこちらも時間をかけ、真剣勝負で付き合います」と大内さんは話す。

  羽が替わる夏場はトレーニングを行わないので、学ぶ会は春先までの期間限定だ。(田辺恵)


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