北海道新聞旭川支社
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旭山動物園だより

生き物思いやり線*野鳥と共生へ木製仕切り     2011/01/07
永山新川の河川敷に設置された「生き物思いやり線」

 旭川市内の人工水路「永山新川」河川敷に昨年12月中旬、野鳥を警戒させることなく観察できる木製の仕切りが登場した。旭山動物園と市民団体「人と野生生物の関わりを考える会」が共同で設置した「生き物思いやり線」だ。野鳥への餌付けを自粛し見守る気持ちをはぐくむことが目的で、関係者は「野生動物との共生を考えるモデルになれば」と期待を寄せている。

 永山新川は牛朱別川の氾濫を防ぐため建設された人工水路。2002年に通水し、オオハクチョウやカモ類など渡り鳥の飛来地となった。愛好者がエサをまき数万羽が集まるようになったが、密集した野鳥のふんやエサの残りなどで水質が汚染され病気がまん延したり、周辺の生き物に影響を与えることが心配されるようになった。

 考える会は、これまで地域住民らを対象に自然観察会や勉強会を重ね、餌付け自粛を呼び掛けてきた。事務局長を務める旭山の福井大祐獣医師は「鳥が好き、生き物と触れ合いたいという気持ちは大切。その上で生態をきちんと知ってもらい、鳥と人間にとって何が幸せかを考えてもらおうと思った」と話す。

 考える会は河川事務所に数年間にわたって働きかけ、観察用の仕切りを設置する許可を得た。仕切りは高さ2メートル、幅16メートル。増水時には安全確保のためすぐに撤去できるようになっており、ハクチョウの生態や飛来する野鳥を紹介する手作りパネルも付けられた。

 鳥インフルエンザの感染防止のため、野鳥へのエサやりは全国的に自粛が求められる傾向にある。日本野鳥の会旭川の代表も務める、考える会代表の柳田和美さんは「思いやり線は観察者の心のバリアで、ルールが定着すれば仕切りは必要なくなる。野鳥の生態を尊重し適切な距離から観察しようという試みは、全道、全国のモデルになるのでは」と話している。(田辺恵)


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